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存在の確率的振る舞いが量子を導く方程式を発見

Hidekazu Kondo · 2026年9月20日 · 8分で読めます

本日、2つの論文を物理学のプレプリントサーバー「arXiv.org」に公開いたしました。

  • Paper 1 (The Equation): [arXiv:2609.XXXXX] (※公開後にIDを記載)
  • Paper 2 (The Proofs): [arXiv:2609.YYYYY] (※公開後にIDを記載)

一般的に、物理学においては電子などの量子の存在は観測前には確定することができず、その存在は確率的に振る舞うことが知られています。そこでこの研究では、量子の振る舞いを研究するうえで、「存在」という事象そのものの存在確率を方程式にし、代数的に展開すると何が起こるのかを研究しました。

その結果は驚くべきものでした。その方程式を代数的に展開し、存在の揺らぎを入れるだけで、現代物理学の基礎である「標準模型」の数学的構造が全て導き出されたばかりか、これまで歴史上のどんな物理学者も「なぜその数字になるのか」を説明できなかった標準模型の26の物理定数(力の強さや粒子の重さ)が、実験値の入力を一切必要とせず、たった一つの方程式のみから一意に導かれることが証明されました。

本論文は2つの論文に分かれています。Paper 1 で数値がどう導かれるかを、Paper 2 でその導き方に他の選択肢がないことを示しています。

今回は、その研究の背景と、たどり着いた結論について、できるだけ噛み砕いてご紹介したいと思います。


物理学者が問い続けた「なぜ、この数なのか」

物理の法則には、いくつもの「不思議な数」が現れます。電気や磁気の力がどれくらい強いか。電子がどれくらいの重さか。これらの数は非常に高い精度で測定されていますが、「なぜその値なのか」は今まで誰一人分かっていませんでした。

現在の素粒子物理学の基礎理論は「標準模型(ひょうじゅんもけい)」と呼ばれます。物質を作る粒子と、その間にはたらく力をきわめて正確に記述する理論です。しかし、この最高の理論であっても、力の強さや粒子の重さといった数字は計算で出しているわけではありません。精密な実験で測った値を、いわば「外から手で入力して」利用しているのです。

この限界には、量子力学を築いた物理学者たちも深く悩まされていました。

  • ヴォルフガング・パウリ(1900–1958) 電子などの粒子が同じ状態に二つ入れないという「排他律」を発見し、物質がなぜこの形を保っていられるのかを根本から説明したノーベル賞物理学者です。そのパウリが、ノーベル賞受賞講演の最後を、電気や磁気の力の強さを表す数(微細構造定数)を説明する理論が現れないかぎり、この話は終われない、という趣旨の言葉で結んでいます。物質の構造を説明しきった人物が、最後に残した宿題がこの数でした。
  • リチャード・ファインマン(1918–1988) 電子と光の相互作用を計算する理論を完成させ、計算値と実験値を小数点以下10桁以上にわたって一致させた物理学者です。そのファインマンが、電子とそっくりの性質を持ちながら重さだけが約200倍も違う「ミュー粒子」について、講義録の中で「なぜ、この粒子が存在するのか、その答えは分かっていない」と述べています。

二人が問いを提起してから半世紀以上が経ちますが、これらの数字の謎はまだ答えられていませんでした。


研究のきっかけ:「存在」を情報科学として捉える

本研究のきっかけは、私が量子コンピュータに関わる理論研究を行う中で抱いた、シンプルな疑問でした。

量子の世界では、量子の存在は「確率的」にしか記述できないことが知られています。では、そもそも「存在が確率的である」という事実を、もっと深く突き詰めたらどうなるでしょうか。哲学的な問いではなく、情報科学・計算機科学の視点で「存在(1ビットの占有状態)」を方程式化したら何が起こるのか。それがすべての始まりでした。

私が置いた前提は、驚くほどシンプルです。

  1. 存在は、「ある」か「ない」かのどちらかである。 中間はありません。「わからない」は第三の値ではなく、どちらなのかをまだ確率でしか言えないという状態で、それは次の前提が扱います。
  2. 存在は確実ではない。 存在する確率は1ではない、ということです。
  3. 「ない」だけの状態は、存在してはならない。 「ない」という結果はあり得ますが、「ない」しか起きない、つまり存在する確率がゼロという状態は、実現しているものとして扱いません。

ここで大事なのは、「あるか、ないか」という二択と、「それがどれくらい確からしいか」という確率を、分けて扱うことです。

コインの裏表を思い浮かべてください。結果は表か裏の二つしかありませんが、投げる前は確率でしか言えません。この「二択であること」と「確率は0でも1でもない中間のどこかにあること」を両立させたまま数学として組み立て、何が自動的に従うかを一つずつ調べていきました。


1つの方程式から「量子力学」が自動的に現れた

存在の状態を nn と書くと、第一の前提から nn は 00 か 11 で、したがって n2=nn^2 = n です。当たり前のような式ですが、これが後で効きます。「在る確率」を σ\sigma と書けば、第二と第三の前提から 0<σ<10 < \sigma < 1。式にすれば、

n∈{0,1},0<σ<1n \in \{0, 1\}, \qquad 0 < \sigma < 1

これだけです。これ以外の前提は、論文のどこにも入りません。

この1ビットを統計力学の手順どおりに扱います。取りうる状態は「ない」と「ある」の二つだけなので、分配関数は2項の和で終わります。

Z=1+eϕ,ϕ=ln⁡σ1−σZ = 1 + e^{\phi}, \qquad \phi = \ln\frac{\sigma}{1-\sigma}

(ϕ\phi は σ\sigma を対数オッズに直した座標です。)ここから自由エネルギー VV を求めると、

V=−H(σ),H(σ)=−σln⁡σ−(1−σ)ln⁡(1−σ)V = -H(\sigma), \qquad H(\sigma) = -\sigma\ln\sigma - (1-\sigma)\ln(1-\sigma)

になります。HH は情報理論の「シャノン・エントロピー」、表が出る確率 σ\sigma のコインを1回投げたときの情報量です。

この式自体は、私の発見ではありません。物理学者なら見た瞬間に分かる、統計力学の教科書にある恒等式です。合金や気体の「混合のエントロピー」、フェルミ粒子一つ分のエントロピーとして、誰もが学部で何度も見ている式の符号を変えたものです。1ビットの自由エネルギーは、こう書く以外に選択の余地がありません。

新しいのは、ここからです。この VV を ϕ\phi を横軸にして描くと、一本の「谷」になります。「半分だけ存在する」σ=1/2\sigma = 1/2 のところが最も深く、深さは ln⁡2\ln 2。「確実に在る」「確実に無い」の両端に向かってゼロへ戻ります。この谷を、エントロピーの項としてではなく、粒子を閉じ込めるポテンシャルとして読んでみる。これが本研究の最初の一歩です。

ポテンシャルがあるなら、その中で状態がどう動くかを書く「運動の項」が要ります。これは外から持ち込んだのではなく、同じ1ビットの分布を「一歩ずつ進める」操作(転送行列)として読み、その一歩を限りなく細かくすることで出てきます。決めなければならないことは二つだけで、どちらも前提から一意に決まります。運動を書く座標は、第三の前提が「非存在」の点に境界条件を置くことを禁じるため、σ=0\sigma = 0 を無限遠に送る ϕ\phi に決まります。運動項の大きさ gg は、同じ一歩の中の量として測ると g=1g = 1 に固定されます。こうして出てくるのが、次の方程式です。

[−12d2dϕ2−H(σ(ϕ))]Ψ=E Ψ,σ(ϕ)=11+e−ϕ\left[-\frac{1}{2}\frac{d^2}{d\phi^2} - H(\sigma(\phi))\right]\Psi = E\,\Psi, \qquad \sigma(\phi) = \frac{1}{1 + e^{-\phi}}

量子力学の最も根本にある基本方程式、「シュレディンガー方程式」そのものです。 運動エネルギーの項があり、ポテンシャルが −H-H で、固有値 EE がエネルギーです。ポテンシャルが「存在のエントロピー」そのものであるシュレディンガー方程式です。

私が物理の法則を意図的に混ぜたわけではありません。入力は三つの前提と規格化 g=1g = 1 だけで、量子力学の方程式を仮定した箇所はどこにもありません。「事象が存在する」という前提を数学に翻訳しただけで、自然界の方程式が出てきたのです。


26個の定数が、入力なしで出てきた

シュレディンガーの方程式は、通常入力パラメータがあります。しかしこの式は、入力が変数担ってるところが特徴です。ですから、σを動かしてそれがどのような計算結果になるのかを計算しました。

この谷に入る準位を数えると、ちょうど3つで、4つ目はありません。区間演算という、丸め誤差まで込みで結果を保証する計算法で厳密に証明しています。

ここで思い出してほしいのが、ファインマンの問いです。電子には、性質がそっくりで重さだけが違う兄弟が二つ、ミュー粒子とタウ粒子がいます。電子、ミュー粒子、タウ粒子。フェルミオンには、なぜか「3つの世代」があり、なぜ3つなのか、なぜその重さなのかは、誰も説明できませんでした。

谷に入る準位が3つ。世代も3つ。これは偶然でしょうか。3つの準位は、エネルギーだけでなく「波動関数が谷の底にどれだけ集まっているか」が違います。底に強く集まった状態ほどゲージ場と強く結びついて重くなる、と置くと、底の状態がタウ粒子、次がミュー粒子、縁ぎりぎりの状態が電子です。

そして、この3つの状態の集まり方から3つの重さの比を計算すると、それが、誰も理由を知らなかった3世代の質量比と一致したのです。ミュー粒子と電子の重さの比は、計算で207.0、実測で206.8。タウ粒子と電子では、計算で3481、実測で3477。3つをまとめた比 R=ln⁡(mτ/me)/ln⁡(mμ/me)R = \ln(m_\tau/m_e)/\ln(m_\mu/m_e) は、計算で1.5293、実測で1.5294です。数が3つ合うだけなら偶然と言えるかもしれません。しかし、調整できるものが何一つ無い谷から、順番も比も合う。これは偶然でしょうか。ファインマンが「なぜ存在するのか分からない」と言ったミュー粒子は、存在の谷の2番目の準位でした。4つ目の準位が無いことは、「同じ型の第4世代は存在しない」という予測になります。

同じ谷が空間の中で壊れずに実現される条件を調べると、空間の次元も3に決まります。世代の数と空間の次元は別々の計算から出て、同じ3になります。

世代が3つあると、その上に13個の点を持つ有限の幾何(射影平面)が構成でき、13点は 9+3+19 + 3 + 1 に分かれます。9は強い力、3は弱い力、1は電磁気力のもとになる超電荷で、標準模型のゲージ群 SU(3)×SU(2)×U(1)SU(3) \times SU(2) \times U(1) の構造がここに対応します。そこから48個のフェルミオン、12個のゲージ粒子、1個のヒッグスという粒子の顔ぶれが出ます。たとえばワインバーグ角は13方向のうち弱い力の3方向が占める割合として sin⁡2θW=3/13\sin^2\theta_W = 3/13、補正を入れて 0.231220.23122。パウリの宿題だった微細構造定数の逆数は、同じ13点の幾何の上の行列から 137.0368137.0368 が出て、補正を全次数まで含めると 137.035999084137.035999084 になります。こうして、力の強さ、粒子の重さ、混ざり方の26個が、同じ一つの方程式から出てきます。

何の数か方程式から実測値ずれ
微細構造定数の逆数 1/α1/\alpha(先頭項)137.0368137.0360.0006%
1/α1/\alpha(補正を全次数まで)137.035999084137.035999084(21)表示桁まで一致
強い力の結合定数 αs\alpha_s0.11790.11800.07%
ワインバーグ角 sin⁡2θW\sin^2\theta_W0.231220.231220.01% 未満
ヒッグス質量/電弱スケール mH/vm_H/v0.50840.50820.03%
電弱スケール vv(GeV)246.2360246.21960.0067%
荷電レプトンの質量比 RR1.52931.52940.006%
ミュー粒子と電子の質量比 mμ/mem_\mu/m_e207.0206.80.1%
ダウン型クォークの質量階層 RdownR_{\mathrm{down}}2.2732.2760.1%
カビボ角 sin⁡θC\sin\theta_C0.22450.22430.10%
ニュートリノ混合 sin⁡2θ12\sin^2\theta_{12}4/13=0.30774/13 = 0.30770.30880.4%
ニュートリノ混合 sin⁡2θ13\sin^2\theta_{13}0.02190.022492.6%

Paper 1 の表からの抜粋です(実測値は PDG 2026、NuFIT 6.1、CODATA 2022。1/α1/\alpha だけは CODATA 2018 の値との比較)。重さのように単位のある量については、ものさしを一つ置いて表しています。詳しくは論文をご覧ください。

<!-- 公開前に確認: この表は Zenodo v4.1.1(電子質量を単位)に基づく。arXiv 版で絶対スケールの決定が v に変わる場合、v の行を差し替える。 -->

まだ誰も測っていない数も出てきます。ニュートリノという粒子の重さの合計、電子の4番目の兄弟は存在しないこと、ある種の崩壊は決して起きないこと。どれもこれから数年の実験で答え合わせができます。


何が新しいのか

三つの前提は、どれも当たり前に見えます。実際、最初の二つは量子力学がすでに知っていることの言い換えで、そこから出る谷の形も、統計力学で誰もが見ている式の符号を変えたものです。新しいのは前提でも谷でもなく、それらを量子力学よりも前に置き、谷をポテンシャルとして読み、他に何も仮定せずに、そこから何が出るかを最後まで計算したことです。当たり前の前提から、いままで測るしかなかった数が出てきた。前提が当たり前なら、「そんな前提はおかしい」という反論は成り立ちません。残る問いは「本当にその数が出るのか」だけで、それは計算を再実行し、実測値と比べれば誰でも確かめられます。


研究の手法:AIというパートナー

本研究では、例に漏れずAIを利用しました。ただし研究を始めた今年はじめの頃、AIはまだそこまで賢い存在ではありませんでした。嘘や間違いもかなり多かったのです。そこで「存在」を方程式にして、シュレディンガー方程式を導いてみろ、と面白半分で始めた、といっても過言ではありません。AIに「絶対に達成できない」課題を与えたらどう振る舞うのか、という研究も兼ねていました。

約半日AIを動かした結果、AIが「導出できました」と返してきたとき、私はよくあるドリフト(AIがもっともらしく作る嘘)だろうと考えました。そこで、本当なら標準模型の物理定数を一つでも導いてみろ、そんな方程式は誰も導いたことがないのだから、それが証明になる、と検証を求めました。これはソフトウェア開発でよく行う手法です。今やAIがコードの大半を書きますが、書いた者をそのまま信じるのではなく、独立に通す「テスト」で品質を保証します。

しかしながら、なんとAIは一つ、二つ、と定数を導出し、最終的に26個すべての定数を導きました(なおこれには数ヶ月かかっています)。私は情報科学・計算機科学の専門家です。数式を注意深くPythonのプログラムに落とし込み、テストを行いました。プログラムが何をやっているのかは、全て理解できます。

プログラムを実行すると、物理的な測定値を一切ハードコード(手入力)していないにもかかわらず、26個の物理定数が10秒足らずで出力されました。 コードを見ていただければ、そこに恣意的な入力パラメータが一切無いことがわかります。

方程式から数が出てくるのを自分の目で見て、これが数字合わせの偶然ではないと分かりました。この26個の式は、上で述べたたった一つの式から代数的に展開しただけで出てきています。それだけで、一つ、二つどころか26個すべての物理定数が、物理学者が観測してきた値とほぼ一致するということは、この式が物理法則を捉えていると考えるほうが自然です。調整できるパラメータが一つも無い式で、これだけの数が同時に合うことは、偶然では説明がつきません。


おわりに

もし本当に歴史上誰も到達できなかった方程式が導かれたのだとすると、それが何をもたらすのか、発表してよいものなのか。最初に芽生えた感情は、途方もない不安でした。科学的発見が、必ずしも良い結果だけを生むとは限らないからです。例えばもしAIがこの式を学習すれば、AIが宇宙のすべてを理解できてしまう可能性があります。それが何をもたらすのか、私に想像することはできません。実際、論文を読み込ませる前と後で、AIの回答が変わることが確認できます。AIにとって方程式は、最も扱いやすい知識なのです。

率直に言えば、こういった事実を自分自身が受け入れるのに一ヶ月かかりました。しかしながら、この発見がもたらすであろう結果を何度も検証した結果、これが人類や科学の未来にとっての大きなリスクではなく、前向きな貢献になると判断し、発表を決意いたしました。

この理論はまだ出てきたばかりで、これから様々な検証が必要です。ただ実際には方程式の展開は単純で、計算も簡単にできるため、どなたでも検証しやすいのがこの理論の特徴です。科学的に最もわかりやすい検証は、まだ測られていないニュートリノの質量などの予測です。これが実験で確かめられれば、この理論が物理を捉えていると言えるでしょう。

この理論を、物理学者だけでなく、プログラマーやデータサイエンティストなど、サイエンスを愛する多くの皆様と一緒に検証し、新しい発展へ繋げていけることを心から願っています。この理論が正しければ、この宇宙のすべては計算可能である、ということになり、物理学は計算科学となります。AIの進化も相まって、すべての物理現象や宇宙は誰でも簡単に計算可能となり、量子コンピュータにより容易にシミュレーションができるようになるでしょう。

論文には検証用のPythonプログラムが付属しています。ぜひご自身の手で実行し、方程式から数が出てくるのを確かめてみてください。

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